くれない草紙 — 小林幸子

あんたと はじめての出逢いが
二十八日 お不動様の ご縁日…
皮肉だねぇ…
切れた下駄の鼻緒が 縁のはじめだなんて…
粋で勇肌で ちょっと悪っぽくってさあ
しゃくだけど そんなあんたに 一目惚れだよ

紅をひと刷毛 川面に散らし
月も未練な 十三夜
恋慕深川 こがれてみても
意地が邪魔して 口には出せぬ
情け片袖 江戸小紋

木場の細路地 お不動さまを
抜けりゃ二の橋 出会い橋
恋慕深川 糸ひく柳
東下駄には 素足が似合う
そんな台詞が いのちとり

男勝りで通ったわたしが…
なんてこったぁ
心にぽっかり穴があいてしまったような
やるせない この気持ち…
態はないねぇ…
逢いたいよ あんたに

辰巳そだちにゃ 死んでも出来ぬ
芸の切り売り 小商売
恋慕深川 遠音の三味に
見栄も飾りも芸者も捨てて
泣いてすがろか 川千鳥

お月さん… 教えておくれよ
どうすりゃいいのさ 心の始末を
あぁ 惚れて惚れて 惚れぬいて
それしかないのかねぇ… お月さま